世界的冒険家の故・植村直己さんの功績をたたえて創設された「植村直己冒険賞」の第26回受賞者が4月22日に発表され、板橋区在住の冒険家・阿部雅龍さんが選ばれた。
同賞選考委員会によれば、前人未踏の「白瀬ルート」挑戦を評価したという
「植村直己冒険賞」は、植村さんの出身地で「植村直己冒険館」を構える豊岡市(兵庫県)が1996(平成8)年に創設。未知の世界を切りひらくとともに、人々に夢と希望を与えてくれる創造的な勇気ある行動・業績を対象に、毎年一個人または一団体にメダルと副賞を贈呈している。
阿部さんは秋田県出身。幼少時から、1912(明治45年)1月に日本人で初めて南極を探検した同郷の探検家で陸軍中尉だった白瀬矗(のぶ)らの冒険物語に触れ、大学時代に出会った冒険家で1999(平成11)年に「植村直己冒険賞」を受賞した大場満郎さんの影響も受けるなどして冒険活動を始めた。2019(平成31)年1月17日、日本人初踏破となる「メスナールート」による南極点単独徒歩到達を達成。2021年11月に再度南極に降り立ち、阿部さんは念願だった白瀬中尉が南極探検で到達した最終地点「大和雪原」に立ち、そこから南極点までの道のりを延伸した前人未到の「白瀬ルート」で南極点を目指すも、悪条件が重なるなどして冒険半ばで断念していた。
阿部さんは受賞会見の中で「名誉ある賞をいただき、身に余る思い。この賞にふさわしい人になりたい。植村さんのように夢を追い続ける」と話し、会見後にSNSや支援者へのメール報告で「今度の(冒険への)期待も含めての受賞と感じている。更に高みを目指し、賞に見合う男になるためにも、年末にまた南極に挑戦する。僕の見せたい景色を必ずやお見せしたい」と意気込む。
阿部さんは今年2月に行ったオンライン報告会の中で、白瀬中尉の南極探検から110年目を迎えた今年11月、途中断念した地点から「白瀬ルート」で南極点到達を目指す再チャレンジの意向を示している。