板橋区は8月8日、「2023花火大会火災事故検証会議(以下、事故検証会議)」を8月7日に設置し、第1回会議を同日に開いたことを発表した。8月5日に荒川南岸河川敷(板橋区)の特設会場で行われた「第64回いたばし花火大会」(対岸の埼玉県戸田市の「戸田橋花火大会」と同時開催)で火災が発生し、フィナーレを残して中止となっていた。
大会中止を伝えるお知らせを掲載した「いたばし花火大会」公式サイト
大会開催の翌6日に板橋区が発表した公式声明によれば、全長約700メートルにわたる花火「大ナイアガラの滝」が大会開始約1時間後の19時58分ごろスタート。その10分後に「大ナイアガラの滝」付近の3カ所で下草が燃える出火を確認し、消火活動を行うも「来場者の安全確保が難しい」と判断して20時10分に大会中止を決定した。会場には消防車18台、消防艇1艇が出動。河川敷の約2.000平方メートルを延焼した火の手は21時4分に鎮圧完了、23時2分に鎮火を確認したという。火災発生に伴うけが人はなかった。
大会終了まで残り30分足らず。大会プログラムの約3分の2を行い、目玉企画の一つだった同大会恒例の「大ナイアガラの滝」の後には、4号玉40発の早打ち、直径360メートルの大きさに開く尺五寸玉(15号玉)の打ち上げや、「花火ポケットモンスター」、120発の恒例「スターマイン」と盛大なフィナーレが控えていた。大会の中止を伝える場内アナウンスに肩を落としながら帰路に向かう人、集まる消防車や燃え広がる火災の様子をスマートフォンで撮影する人、対岸の「戸田橋花火大会」のフィナーレの花火の連発に見入る人など、多くの人が大会中止を惜しむ一夜となった。
子ども連れの40代女性は「子どもはポケモンの花火が見られず不満の様子だったが、戸田橋側の鮮やかな花火で心が洗われた。同時開催で良かった」と話した。地元在住の50代男性は「4年前は、枯れ草などに引火してもすぐに消火できていた。今日は風が強かったので、火の粉の散り方が違ったようで、風で火の勢いが増したのかもしれない。仕切り直して、1年後のリベンジを楽しみにしたい」と来年の開催に期待を寄せた。
板橋区の担当職員は、「志村消防署と志村警察署による火災の発生原因の調査結果を踏まえ、続報や会見を予定している。コロナ禍を経て、多くの方が楽しみにしていた花火大会で火災を発生させてしまい、大変申し訳ありません」と謝罪した。
事故検証会議のメンバーは、板橋区長、副区長、政策経営部長、総務部長、法務専門監、危機管理部長、産業経済部長、土木部長ら同区関係部署の責任者ら13人で構成。区では今回の事故を受けて、現場検証や関係機関からの情報収集などを進め、「およそ1カ月後を目安に原因究明及び課題の抽出と、今後に向けた改善の方向性などを示す」としている。