板橋で創業して54年になる印刷会社・恒信印刷(板橋区板橋)が、倉庫や工場の場所を占拠している在庫紙の処分に困りSNSで引き取り先を求めて呼び掛けたところ、反響を呼んでいる。
「ご自由にお持ちください」と置かれた在庫紙の山は全体のほんの一部
社長の吉田和彦さんは「印刷に使って余った紙を少しずつ取っておいたら、10トン以上の量になってしまった。気が付いたら、倉庫や工場の場所をかなり占拠していて、ついには有料の倉庫を借りるまでに。このままでは作業もやりづらくコストもかかるため、欲しい人にお譲りしようと思い立った」と話す。
これまでにも近隣の保育園などに工作用として譲ったことがあり、喜んでもらった経験が今回の呼び掛けにつながった。「紙が余って困っていることを知人に話したら、幼稚園や保育園で工作に使ってもらうのはどうかと紹介してもらって。実際に子どもたちが喜んで使ってくれたというのを聞いてうれしかった。他にも、商店街の飲食店がメニューやポップに使ってくれて、見に行ったこともある。地域の方に活用してもらえるのはいいと思ったが、在庫がありすぎて、そうやって使ってもらっても全く減らない。むしろ、増えていく一方」と吉田さん。
そこで紙を必要としている人にもっと情報を届けようと、SNSを利用することを思い付いた。「できれば近くの方にお知らせしたくて、まずは板橋区のコミュニティーに投稿してみた。30分ほどですぐに取りに来る方が現れてびっくり。その後もコンスタントに、問い合わせや実際に来る方が続いている」。
実際に紙を譲り受けに来た人に話を聞くと、「ボーイスカウトの活動をしている。子どもたちの工作にちょうどいい。色もカラフルでいろいろな使い方ができそう」「板橋の地元でデザインの仕事をしている。作品を出力するのにちょうどいい」など、喜びの声が多く聞かれた。
「紙の種類は100種類以上。倉庫の手前にあるものから、少しずつ本社に運んでいるので、どんな紙がいつ出てくるか分からない。中には、1枚700円以上で販売していたような高級な紙も」。すでに廃版になっている紙もあり、欲しい人にとっては宝の山だ。
それぞれの量は少なく、業務用印刷に使うのは難しいが、個人で使うには十分なクオリティーの用紙がそろう。「印刷では白くて薄い紙がよく使われるのでそういったものの在庫はあまりないが、冊子の表紙に利用したような厚紙や色紙が、どうしても少量ずつ余ってしまう。工作やペーパークラフトなど、紙の分量は少なくてもいい場面で使ってもらえれば。少量でいいなら、名刺やショップカードにも向くしっかりした紙が多くある」。
倉庫には印刷用の大きなサイズのまま保管してあるが、なるべく使いやすいサイズにカットして本社に運んでいるという。「本社に置いてあるのはほんの一部。この何十倍も倉庫や工場に保管してある」が、SNSに投稿した翌日、情報が拡散され一気に問い合わせが増えた。「ある方が書いたツイッターのリツイートが、一時、日本で4位になってびっくり。最初の投稿から2日後には朝から取りに来る人が絶えず、10時前にすでに20人ほど来た。電話も鳴りっぱなし」と、想像以上の反響に驚いている。
用紙の譲渡は、工場や倉庫では対応しておらず本社のみで対応する。受付時間は9時~12時、13時~18時。日曜、祝日定休。駐車場がないので、車で行く場合は近隣のコインパーキングを利用することになる。