赤塚一番街商店街の洋菓子店「フランス製菓」(板橋区赤塚2、TEL03-3930-2255)が11月25日、リニューアルオープンした。
同店は1968(昭和43)年に開業し、昭和の古き良きたたずまいを残す洋菓子店として地域住民から愛されている名物店で、開業から50年目を迎える今年5月に一時休業して老朽化した店舗の解体・新築工事を進めていた。
同店では、青銅製の鋳造大仏では奈良・鎌倉に次いで日本で3番目に大きいとされる乗蓮寺(じょうれんじ、板橋区赤塚5)の東京大仏をかたどった「大仏サブレー」(1個110円)を製造・販売する店として地元で知られる。同商品は都内観光名所で「板橋十景」にも指定されている同寺や赤塚城址を訪れる観光客の土産品や贈答品として重宝され、区民選出の「板橋のいっぴん」にも数えられている。
「大仏サブレーは今から40年ほど前、当時完成して間もなかった東京大仏が商店街のシンボルに決まった時、商店街の名物商品を作ろうという話になって先代の父が開発した」と現店主兼パティシエの山田賢二さん。大仏サブレーとイチゴのショートケーキと、開業時からの看板商品である「タヌキ」(1個280円)が売れ筋TOP3で、いずれも同店になくてはならない存在だという。
「タヌキ」はスポンジケーキの上にバタークリームを塗ってチョココーティングを施し、動物のタヌキを模したケーキで、開業から50年間変わらず子どもや女性に人気の商品。「タヌキは父が修業をしていた、当時池袋にあってのれん分けをしてもらった本家・フランス製菓にもあった商品だと聞いている」と山田さん。
著書「たぬきケーキめぐり」(現在4巻まで発刊)やWebサイト「たぬきケーキのあるとこめぐり」の運営を手掛けるタヌキ型ケーキの愛好家・松本よしふみさんによれば、「たぬきケーキは、1950年代中盤に日本で誕生したものの、どこが起源か定かではない。町のケーキ屋さんで見かける定番商品だったが、1970年~80年代をピークにコンビニやおしゃれなやパティスリーに取って代わられ、見かけることが少なくなっていた」といい、「たぬきケーキ愛好家は全国に少なからずいて、ここ数年はNHKなどの情報番組やウェブメディアで取り上げられるようになり、復活の兆しを見せている」という。
同店にも2008年を最初に3度足を運んだという松本さんは、「フランス製菓のタヌキはスポンジの上に頭部を乗せて全身をチョコレートで覆った『雪だるま型』で、味はバタークリームを使った王道タイプ。サイズは比較的大きくて食べ応えがある。耳の部分は以前はホワイトチョコだったが、今はアーモンドスライスに変わったと聞いている。フランス貴族の馬車と思えるシルエットをあしらったロゴでデザインされた包装紙も格好良く印象的で、オススメしたい逸品」と話す。
同店では正式オープン日を前に、でき上がった商品から試験販売的に店頭に並べてプレオープンしていたが、山田さんは「タヌキは中でも思いを込めて指先で繊細に作っていくので、見た目以上に手間暇がかかっている」と話し、「オープンに間に合うように山から帰ってきてくれた」と笑顔を見せる。
今回のリニューアルでは、店頭から焼いている様子がうかがえるオーブンに買い替えるなど設備面でも充実を図った。その上で、新商品として「焼きドーナツ」(1個180円)の販売も始めた。
先代のころは本家からのれん分けした兄弟店がいくつかあったが、本家を含めて現在ではいずれも店をたたんでしまい、「フランス製菓」を継いでいるのは本家店主の娘と結婚した先代が夫婦で独立開業した赤塚の同店のみだという。2015年に、現店長で妻のキクエさんと共に夫婦で店の経営を引き継いだ山田さんは「伝統の味や商品をしっかりと受け継ぎながらも、時代に合わせた新商品や季節メニューの開発も日々精進で手掛けていく。一日一日を大切に、末永く商売を続けていきたい」と話す。
営業時間は9時~20時。火曜定休。