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板橋区立美術館学芸員に「國華賞」 江戸中期の才人「建部凌岱展」の図録評価

「第34回國華賞」贈呈式の受賞3者。左が植松有希さん

「第34回國華賞」贈呈式の受賞3者。左が植松有希さん

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 板橋区立美術館(板橋区赤塚5)の学芸員・植松有希さんが、日本・東洋美術史に関する優れた研究論文や図書を表彰する「第34回國華賞」で國華展覧会図録賞を受賞した。

評価を受けた「建部凌岱展 その生涯、酔たるか醒たるか」図録

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 國華社は、明治期に美術史家・美術評論家として国内外で活動した岡倉天心が帝国博物館(東京国立博物館の前身)部長だった1889(明治22)年、官僚の高橋健三らと創刊した月刊の美術研究誌「國華」の編集・刊行。を目的に設立。1939(昭和14年)から朝日新聞社が経営を引き継ぎ、2020年10月に通算1500号を刊行。同誌の雑誌刊行が途切れたのは関東大震災と第二次世界大戦による一時期のみで、現在も毎月刊行する世界で最も古い美術誌の一つとして海外でも知られている。「國華賞」は創刊100年を迎えた1989(昭和64・平成元)年に創設した。

 植松さんは板橋区立美術館が昨年3月~4月に開催した企画展「建部凌岱(たけべりょうたい)展 その生涯、酔(よい)たるか醒(さめ)たるか(以下、「建部凌岱展」)」を担当した学芸員で、今回の國華展覧会図録賞を受賞した図録の執筆・編集も手がけていた。

 建部凌岱は江戸中期に活躍し、建部綾足(あやたり)の筆名などで存命中から俳人、随筆家、読本作家としても知られた才人。展覧会図録は、作家・太宰治が作品「津軽」の中で「綾足」に言及していたことや、青森県弘前市で1936(昭和11)年に行われた企画展に太宰の生家・津島家が所蔵する作品が出品されたことなどにも冒頭で触れ、凌岱の画業や生涯などを多数の展示作品の図版を交えて全7章立てで紹介。陵岱の年譜や、落款(らっかん)・印章の一覧も掲載し、「彩の人 建部綾足」の著書がある清泉女子大学人文科学研究所客員所員・玉城司さんや、中之島香雪美術館(大阪府大阪市)の勝盛典子館長ら識者による寄稿や、漫画家・森栗丸さんによる陵岱の生涯や人となりを紹介する漫画10編など、幅広い層に向けて企画編集した一冊となっている。

 植松さんは「昨年開催した展覧会と受賞した図録を通じ、絵師、俳人、随筆家、読本作家、国学者などマルチに活躍した建部凌岱が再評価されることはもちろん、開館以来、個性豊かな企画展を作り続けてきた板橋区立美術館の活動を広く知っていただく機会になれば」と話す。

 同賞の選考経過や選評などの詳細は、現在発売中の「國華」第1526号(7,700円)に掲載している。

 「建部凌岱展」の展覧会図録(2,500円)は同館で販売している。

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