1889(明治22)年創業で竹材・竹製品を取り扱う「齋藤商店」(板橋区小豆沢2)が2022年12月30日、閉店した。
同店はケヤキを主に扱う原木商として現在地で創業。中山道(なかせんどう)から新中山道(現・国道17号線)へと拡張工事が行われた1933(昭和8)年、木造2階建てに新築した当時の姿を残している。近年は竹材を主として扱い、竹垣の設営や、箒(ほうき)や竹笈(たけおい=背負って荷物を運ぶための竹製のかご)などの竹製品や竹細工用の部材を販売をしていた。昨年は創業から133年。現在の建物となってから、今年で丸90年目を迎える。
店舗と住居部分が一体となった建物は国産材を使い、下屋庇(しもやひさし)を巡らせたL型平面の入母屋造桟(いりもやづくりさん)瓦ぶきの平屋に2階部分を載せた複雑な構造で、外壁には真壁しっくい塗りが施されている。破風(はふ)を各所に見せた屋根の造りや、2階の窓の手すりに高欄(こうらん)風の反りを持たせるなど意匠的にも技術的にも優れ、郊外の独立住宅の趣を見せる近代和風建築のたたずまいを今に伝えている。
板橋区内の建築史における貴重な建造物として、2012(平成24)年に板橋区の有形文化財指定を受けたほか、江戸・日本橋から京都・三条大橋までを結ぶ中山道3番目の一里塚として1922(大正11)年に国の史跡認定を受け、1984(昭和59)年に板橋区有形文化財に指定された「志村一里塚」と隣接する地域のランドマークとして古くから親しまれてきた。1988(平成4)年に「中山道志村一里塚とその周辺」として「活(い)き粋(いき)いたばしまちなみ景観賞」を受賞し、2021年には「齋藤商店と志村一里塚」として「板橋区景観賞」も受賞している。それだけに、三田線・志村坂上駅や商店街から往来する人の中には、足を止めて同店のガラス戸に貼られた「閉店のお知らせ」に見入る年配者の姿が多く見られる。
貼り紙には、同店の業務に60年以上携わった店主・斎藤剛彦さんの署名で「日頃より当店をご利用いただきまして、ありがとうございます。誠に勝手ながら、当店は令和4年12月30日をもちまして閉店させて頂くこととなりました。長きに渡り皆様にご愛顧いただき心より御礼申しあげます。今後の皆様方のご健勝、ご多幸をお祈りいたしましてお礼の言葉にかえさせて頂きます」と書かれている。
同店関係者によると、住居も兼ねた建物は維持する予定だという。