果樹園「さんぶどう園」(板橋区大門6、TEL 090-6955-9425)が7月27日、今季のブドウ狩り営業を行わないと発表した。
「さんぶどう園」の農場は広さ約25アール(約756坪)と東京23区内最大級の敷地面積を誇り、毎年8月後半から9月上旬にかけて地域住民や区内外からの家族客らがブドウ狩りに訪れてにぎわう地域の観光スポット。板橋区内で唯一、ブドウ狩り営業を行う果樹園として、近隣の小学校や保育園、福祉園の子どもたちが毎年遠足などで訪れていた。
園主の田中哲男さんによると、例年シャインマスカットや巨峰など敷地内に8000~1万房のブドウが実っていたが、今年は6月の度重なる強風と長雨、日照不足などの影響で良い状態のブドウが少なく、新型コロナウイルス感染拡大の影響も考慮して創業55年目で初の休園を決断したという。
「よくある果樹園のブドウ狩りは、来場者が採ったブドウの重さをそのまま量って料金を取っているところが多いが、うちはお客さまとコミュニケーションを図りながら、房(ふさ)から不具合のある粒などを選定して切り落とした上で重さを量って売るスタイルが売りの一つになっている。新型コロナの状況から完全予約制での営業も検討したが、うちのブドウに期待して来園していただく方々のことを思えば、創業以来初の休園もやむなしと考えた」と田中さん。
「駅からも遠く、父の世代のころは『板橋区のチベット』と呼ばれることもあった場所。わざわざ苦労して不便なところに足を運んでいただいた方々を、最高のブドウと接客サービスでもてなすことが『さんぶどう園』の売りだと思っているため、産直品販売サイトへの出品など提携の声掛けも多くいただくが、すべて断っている。新型コロナ禍が落ち着いた時にお客さまの期待に応えることができたら」とも。
同園の創業は1965(昭和40)年。創業者の父を手伝い、ブドウの生産や近年ではツイッターなどSNSでの情報発信なども手掛けてきた。田中さんは「今年が園の運営を引き継いだ1年目の年だった」と悔しがる。
今年はブドウ狩り営業を行わないが、状態の良いものは房で、出来の良い粒だけをパック詰めするなどして、近くのJA東京あおば「ファーマーズショップにりん草」(板橋区高島平3、TEL 03-3975-2189)や「板橋地区アグリセンター」(板橋区四葉2、TEL 03-3930-0186)で8月20日から販売を行う予定という。