講談師の神田真紅さんが6月14日、板橋駅前にある立ち飲み居酒屋「いたばし研究所」(板橋区板橋1、TEL 050-3746-5375)で創作講談「加藤曳尾庵(かとうえいびあん)と神社姫(じんじゃひめ)」を上演した。
板橋駅西口出口で行われている「板橋駅からエールを送ろうプロジェクト」PR企画の一環。同プロジェクトではこれまで、「勝手にイタバシものがたり」と題し、ユーチューブライブで「新選組と講談」「板橋駅の歴史」「板橋の医療従事者・加藤曳尾庵と『神社姫』」のテーマで配信を行ってきた。
同日は「いたばしものがたりプロジェクト」代表のトモタ佳(けい)さんによる講演「太宰治と板橋」に続き、真紅さんが講談を披露した。
真紅さんは茨城県水戸市出身。東京女子大文理学部史学科を卒業後、落語・演芸誌の編集者を経て2009(平成21)年に講談師・神田紅さんに入門。2013(平成25)年11月に二ツ目昇進。今年2月に真打昇進で話題となった六代目神田伯山さんに代わり、現在神田一門の二ツ目トップとして活躍している。「南総里見八犬伝」など古典の連続物を得意とするほか、新選組、刀剣、アニメ、ゲーム、音楽、映画など多彩なジャンルを題材にした創作講談を手掛けることでも知られる。
真紅さんの講談「加藤曳尾庵と神社姫」は、トモタさんが5月31日配信の「勝手にイタバシものがたり」で紹介した「加藤曳尾庵と『神社姫』」の内容を引き継ぐかたちで披露され、疫病よけの「神社姫」の瓦版に関する話に1639(元禄6)年の江戸で起きた別の騒動を合わせ、新型コロナウイルス感染症の拡大懸念から発生したマスクやトイレットペーパー買い占め騒動などと重ねたオリジナル作品に仕立てた。
5月31日の配信では、1846(弘化3)年に出現して疫病流行を予言したとするアマビエよりも27年早い1819(文政2)年に肥前国(現・長崎県、佐賀県)の浜辺に出現した「神社姫」や、出現時期や容姿や予言内容など多くの類似点が指摘されている「姫魚(ひめうお)」「神池姫(かみいけひめ)」について紹介している。
トモタさんによると、医師兼寺子屋の先生をしていた曳尾庵は文政2年3月から板橋宿で暮らし始め、赤痢の流行で死者が続出していた同年7月下旬、浅草で売られていた瓦版に描かれた神社姫の姿と「今から7年間は豊作が続くが、コロリ(コレラ)という病が流行する。わが姿を書き写して見せれば、病を免れ長寿になる」との予言内容を「我衣(わがころも)」と題した記録の中に書いているという。
真紅さんは「曳尾庵は私と同じ水戸出身。水戸藩を出た後に諸国放浪して医術や書画鑑定を学んだらしく、それこそ講談で有名になった『水戸黄門』のような諸国放浪の連続講談を作れるのではと考えている。以前に板橋でも講談を披露した新選組局長・近藤勇が、板橋宿で幽閉された平尾宿脇本陣を務めていた豊田市右衛門(とよだいちうえもん)と曳尾庵が懇意にしていた点も興味深く、新選組講談と合わせて曳尾庵の講談制作にも取り組んでけたら」と意欲を見せる。
創作講談「加藤曳尾庵と神社姫」と同日のアフタートークや「勝手にイタバシものがたり」の関連映像は現在、ユーチューブチャンネル「板橋駅まちづくり応援団」で配信している。