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板橋本町「長寿庵」で落語会 柳亭こみちさんの古典落語と食事会

長寿庵店内で落語を披露する柳亭こみちさん

長寿庵店内で落語を披露する柳亭こみちさん

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 板橋区の文化財・縁切榎(えんきりえのき)ゆかりのそば店「長寿庵」(板橋区本町)が11月20日、「板橋本町長寿庵寄席」を初開催し、柳亭(りゅうてい)こみちさんが高座に上がった。

特製そばずし(写真)などの「お噺セット」が振るまわれた

 同店の開業は1966(昭和41)年6月。当時の縁切榎は現在地の筋向かい、旧中山道(なかせんどう)沿いの無住家屋が立つ荒れ地に残されたご神木で、初代とも2代目ともいわれていた。地域の再開発などから同地にマンションが建つことになった際、地元の本町坂町会で榎の保存を訴える声が上がり、1969(昭和44)年6月に切り倒されたご神木の一部を祠(ほこら)に祭った社が現在地に造られ、新たに3代目の榎と槻(つき=けやき)が植えられ現在に至っている。長寿庵は本町坂町会に属し、移設当初から町会として縁切榎の管理に関わって願掛けの紙片を店内で販売。後に昔ながらの絵馬を販売するようになり、現在も絵馬を販売している。同店の名物「榎蕎麦(そば)」は、榎が移設された当初から数年だけ提供していたものを、現在の2代目店主・小澤崇さんが2010(平成22)年に店を継いだ際に榎にゆかりのあるメニューをと復活させたという。

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 今回の寄席は、小澤さんがいつか店で落語会を開きたいと考えていたもので、そばずし、焼き油揚げ、鴨串焼き、柚子(ゆず)切りそば、ミニケーキ、ドリンクが付いた当日限定メニューと、こみちさんによる、そばと縁切榎にちなんだ落語をセットにして「榎・そば・落語会」のタイトルで初開催した。

 こみちさんが披露したのは「そば清(せい)」と「縁切榎」の2席。落語ファンおなじみの登場人物の性別を女性に変えたり、女性の登場人物を女性噺(はなし)家ならではの演じ分けをしてみせたりと独自のアレンジで会場の笑いを誘った。幕末から明治時代にかけて活躍した三遊亭圓朝(えんちょう)作の「縁切榎」は、江戸時代の頃に旗本の息子が付き合いのある2人の女性のどちらをめとるか悩む噺で、ご利益にあやかって板橋宿まで願掛けに縁切榎を訪れる様にこみちさん独自のアレンジが加わって面白おかしく語られた。落語終了後、店員と来場者が一緒になってテーブルや椅子を並び変えて通常の店内レイアウトに戻し、こみちさんを囲んだ食事会でにぎわった。

 長寿庵に週3回通っているという60代男性は「上野や浅草へ落語を聞きに行くこともあるが、『縁切榎』を今回初めて聞くことができた。真打ちの落語家さんが来てくれて、なじみの店で食事もご一緒できて、ぜいたくな時間を過ごすことができてうれしい。次回もまた来たい」と顔をほころばせた。

 小澤さんは「縁切榎ゆかりの店で、縁切榎の落語を聞いてもらえる意味合いは、地域の文化や歴史に触れてもらうことにもつながって大きいと考えた。食事会では、来店する時間帯が違って普段同席することのない常連さんや、ご新規さんも同じテーブルで談笑して親睦を深めることができる貴重な場になり、縁切榎がつないでくれた不思議な縁結びの力を改めて感じた。今回すぐに定員になってしまい、参加できなかった方々からは次の日取りが決まったらすぐ教えてほしいと言われている。第2回、第3回と長寿庵寄席を続けていきたい」と意気込む。

 長寿庵の営業時間は11時~20時。木曜定休。

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