板橋区立伝承芸能伝承館(板橋区徳丸6)で6月22日、「第29回 三代目若松若太夫 説経節独演会」が開かれる。
同日は、若太夫門下・鷲東(わしとう)昌枝さんが「御祝儀宝(ごしゅうぎたから)の入船(いりふね)」を、3代目が「小栗判官一代記」から「鬼鹿毛曲馬段(おにかげきょくばのだん)」、「佐倉義民伝」から「甚兵衛渡し場」の「住家子別段(すみかこわかれのだん)」を語る。
「説経節」は、中世の頃から伝わる哀切に満ちた物語を三味線の音色に乗せて語る伝統芸能。鎌倉時代に僧侶が庶民に経典の教義を説いた「説経(教)」をルーツに芸能化したもので、室町時代に「さんせう大夫」「小栗判官」「石童丸」「葛の葉」「しんとく丸」など五説経と称される物語が作られたとされている。
初代・若松若太夫は明治後期から昭和の戦前にかけて活躍し、明治期には衰退しつつあった説経節の芸能を盛り立てた立役者とされ、今なお続く後援会「若松会」の立ち上げには渋沢栄一や嘉納治五郎、村井弦斎ら名士が名前を連ねている。
昨年は3代目の「若松若太夫」の名跡襲名から20周年。今年は師匠の2代目・若松若太夫(故・松崎寛さん)の生誕100年の節目に当たる。3代目は東京都指定無形文化財(芸能)保持者、板橋区登録無形文化財説経浄瑠璃保持者の認定を受けている。
3代目は「令和改元の年に何か新しいことをと考え、初代の師匠・若松辰太夫の師である5代目薩摩若太夫が使った『小栗判官』の古い台本から『鬼鹿毛曲馬段』を新たに起こして初披露することにした。『佐倉義民伝』も古い台本からの校訂。江戸期、板橋宿を拠点に芸事に励んだ5代目薩摩若太夫一門の説経節を新たな時代によみがえらせることができたら」と意気込む。
12時30分開場、13時開演。定員は先着90人。入場無料。