「ひとり語り」公演などを手掛ける古屋和子さんが3月23日、東京・広尾の東江寺本堂(渋谷区広尾5)でプロデュース公演「語る・踊る-説経節の世界」を開き、ゲストとして舞踊家・坂東冨起子さんと説経節の若松若太夫さんが出演する。
今回「説経節の世界」と題し、古屋さんの「ひとり語り」と、坂東さんの舞踊と若太夫さんの説経節共演を交互に披露。古屋さんの「道成寺よもやま話」を受けて、今年1月の「説経浄瑠璃鑑賞会」で初披露した坂東さん・若太夫さんによる「日高川入相櫻(いりあいざくら)」を行い、古屋さんの「しのだづま」の語りの後に「葛(くず)の葉」を披露する。「葛の葉」では、しの笛・能管・雅楽横笛奏者の松尾慧さんも参加する。
坂東さんによれば、松尾さんを含む4人の共演は2017年11月、文化庁芸術祭参加作品として上演した「坂東冨起子の会」による唄語りの舞踊劇「鶏娘(とりむすめ)」以来だといい、「古屋さんからの声掛けで4人の再共演が実現できた。今回、東江寺本堂内のひのき舞台上で、1月の大きいホールで行ったのとはまた違った、御本尊を前にした説経浄瑠璃の原風景のような公演を楽しんでもらえたら」と期待を膨らませる。
説経節は鎌倉時代に僧侶が庶民に向けて教義を説いた「説経(教)」をルーツとする「語り物芸能」の一つで、歌舞伎や演劇の演目として現代に伝わる「さんせう太夫」や「小栗判官」「石童丸」などの物語を、室町時代の頃から三味線の音色とともに語り継いできたとされる。
「浄瑠璃や歌舞伎などで古くから演じられてきた安珍・清姫の『道成寺もの』も、陰陽師(おんみょうじ)・安倍晴明の出自を描いた『葛の葉』『しのだづま』も、いずれもオリジナルは説経節。原典である説経節の奥深さも感じてもらえたら」と坂東さん。
坂東さんは板橋区小茂根在住。若太夫さんは説経節を明治期に再興した「若松若太夫」の名跡を継ぐ3代目で、東京都無形文化財(芸能)保持者・板橋区登録無形文化財説経浄瑠璃保持者の認定を受けている。
古屋さんは早稲田小劇場を経て1978(昭和53)年から「語り」の芸事に取り組み、国内外の公演に出演。1991年から毎年カナダ・アメリカ・オーストラリアなどでワークショップを行い、各地のストーリーテリング・フェスティバルに出演。愛知県豊田市では公共施設や神社、農村の歌舞伎舞台などを会場にした語りと音楽の祭典「とよたストーリーテリング・フェスティバル」で長年出演と芸術監督を担当し、2010年に豊田文化功労賞を受賞。東江寺本堂では定期的にプロデュース公演を手掛け、舞踊・音楽など広義の「語り物」ライブを行っている。
今回の「日高川入相櫻」は1月公演の再演で、「葛の葉」は今年11月に上演を予定している内容の一部を披露する予告編的な演目になるという。
14時30分開場、15時開演。入場料は3,000円。