板橋区役所のギャラリーモールで現在、国史跡指定記念展「“はじめまして” 陸軍板橋火薬製造所」が開かれている。
昨年10月13日に「陸軍板橋火薬製造所跡」(板橋区加賀1)が国の文化財として史跡指定を受けたことを記念した同展。「文化財と史跡」「史跡の歴史」「史跡の公園」をテーマに、関連する区指定文化財や現存する施設の写真などを含めてパネルで解説する。
展示パネルの解説文を担当した生涯学習課文化財係の杉山宗悦さんは「国の史跡指定を受けてから、区としては初めて板橋火薬製造所跡をメインに取り上げた公式展示」と言い、「2024年に予定しているグランドオープンの日まではまだ時間があり、タイトルに『はじめまして』と付けたように、史跡のこれまでの歴史とこれからの将来を、まずはごあいさつ、という意味合いで簡潔にパネルにまとめた。板橋火薬製造所跡は国内最古の火薬研究所と発射場の跡が現存していて、近代化・産業遺産としての価値が評価されたことを、今後も機会を設けて認知を広げていきたい」と話す。
史跡公園整備予定地は、加賀藩下屋敷築山遺構と石川県金沢市との交流の歩みを伝える「現・加賀公園エリア」、弾道管・燃焼実験室・発射場など火薬の近代的製造と研究を行っていた「旧・火薬製造所エリア」、物理試験質・爆薬理化学試験質などがあった「旧・理化学研究所エリア」、以上3エリアを結ぶ石神井川・金沢橋・桜並木などの「石神井川エリア」の4エリアで構成する基本構想がまとめられている。
産業遺産の史跡公園としては完成すれば都内初となり、坂本健区長は昨年9月の記者会見で「産業界、商業界、観光や文化団体などの力を結集した、魅力ある板橋区の新たなシンボルとしたい」と期待感を示していた。
今回の展示では、板橋区加賀地域が江戸時代には加賀藩前田家の下屋敷が広がっていたことに由来し、幕末には加賀藩による西洋式大砲の製造拠点として、明治期に入って旧陸軍の火薬製造所や火薬研究所が設置された近代火薬研究の要所として軍事面を支えてきた歴史や、空襲被害や第二次世界大戦後に占領軍の接収を受けた野口研究所や理化学研究所が火薬製造所跡地の建物に入居し、後にノーベル物理学賞をした湯川秀樹さんや朝永振一郎さんら日本の科学界をリードしたさまざまな研究者が戦後の理化学研究所を率いた物理学者・仁科芳雄を慕って集まった背景などを詳しく紹介している。
展示時間は9時~17時(最終日は15時まで)。入場無料。2月9日まで。