日大板橋病院 脳神経内科 石原正樹先生からの健康情報
提供:日本大学医学部附属板橋病院 制作:板橋経済新聞編集部
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今回は「頭痛」をテーマに、日大板橋病院 脳神経内科 石原正樹先生に話をしていただきました。
多くの人が日常的に感じる頭痛には、病気が原因ではない「一次性頭痛」と呼ばれるものがあります。これは、脳や体の他の病気が原因ではなく、頭痛そのものが問題となるタイプの頭痛です。代表的な一次性頭痛には「緊張型頭痛」「片頭痛」、そして「群発頭痛」が含まれます。緊張型頭痛は5人に1人が経験する頭痛で、長時間のデスクワークやストレスが原因となることが多く、頭全体が締め付けられるような痛みが特徴です。片頭痛は13人に1人が経験し、片側のこめかみから脈打つような痛みが始まり、光や音に敏感になったり、吐き気を伴うこともあります。片頭痛の診断のポイントは、光や音に過敏になり、吐き気や嘔吐(おうと)が見られ、動くと痛みがひどくなる症状が2つ以上当てはまることです。群発頭痛は比較的まれなものですが、非常に強い痛みが特徴です。頭痛の治療は、「急性期治療」「予防療法」「生活習慣の改善」の3つが基本となります。また、鎮痛薬を頻繁に使用しすぎると、かえって「薬剤使用過多による頭痛」が起こることがあるため、自己判断で薬を使いすぎることには注意が必要です。
さて、頭痛は時として命に関わる病気のサインであり油断できません。次に緊急度と重症度の高い「危険な頭痛」「二次性頭痛」について紹介します。
頭痛は日常的な症状ですが、時には命に関わる危険なサインとなることもあります。今回は、特に注意が必要な「危険な頭痛」「二次性頭痛」について紹介します。中でも警戒すべきなのは、突然始まる激しい頭痛です。例えば、くも膜下出血では「金づちで殴られたような」や「人生最悪の頭痛」と表現されるほどの激痛が特徴です。このような頭痛が現れた場合、すぐに医療機関での診察が必要です。脳出血や脳動脈解離も同様に、急に激しい頭痛を引き起こし、迅速な治療が求められます。
さらに、頭痛とともに発熱、嘔吐(おうと)、意識の混濁、首の硬直などの症状がある場合は、髄膜炎や脳炎の可能性も考えられます。これらの感染症は治療が遅れると後遺症が残るリスクがあるため、早期の診断とすぐに病院を受診することが重要です。
また、視力の低下や物が二重に見える、ろれつが回らない、手足のまひなどの神経症状が頭痛に伴う場合も危険なサインです。こうした症状には、脳腫瘍や脳の血管のトラブルが潜んでいる可能性があります。このような場合、自己判断せずにCTやMRIなどの精密検査を受けることが大切です。頭痛が普段と違うと感じたり、異常な症状が現れたりした場合には、早めに専門医を受診することが命を守る鍵になります。
頭痛は多くの人が自己判断で対処しがちな症状ですが、実際には専門医の診察がなければ改善しない場合も少なくありません。急に頭痛がひどくなったり、新しい症状が現れたりしたときは、専門的な診断が必要なのはもちろんですが、緊張型頭痛や片頭痛などのよく見られる頭痛でも、市販薬で一時的に痛みが和らいだとしても、根本的な原因が解決されないことが多いです。頭痛が頻繁に起こる場合や症状が悪化する場合には、医療機関での受診が重要となります。
適切な治療法や予防策を知ることで、日常生活の質を大きく向上させることが可能です。特に片頭痛は、生活だけでなく、仕事や学業にも大きな影響を与えるため、専門医の治療やアドバイスが欠かせません。自己判断に頼らず、早めに専門医に相談することで、病気の早期発見や治療が可能になります。適切な診療を受けることで、安心して日常生活を送ることができるようになります。
一次性頭痛では、頭痛を予防し、生活の質を向上させるために日常生活でのセルフケアが大切です。まずは、規則正しい生活習慣を心がけましょう。睡眠不足は頭痛を悪化させる一因ですが、逆に寝過ぎや休日の長時間睡眠も頭痛を引き起こすことがあるため、適切な睡眠リズムを保つことが重要です。
さらに、長時間同じ姿勢を続けると筋肉が緊張し、緊張型頭痛の原因になります。これを防ぐためにも、定期的に体を動かし、ストレッチを行うことが効果的です。ストレスも頭痛の大きな要因の一つなので、リラックスする時間や趣味に没頭する時間を持ち、ストレス解消法を見つけることが重要です。
また、チョコレートやチーズ、赤ワインなど、片頭痛を引き起こす特定の食べ物、天候の変化や太陽光やフラッシュライト、匂いなどの環境要因もあるため、自分の頭痛の原因となる要素を把握し、できるだけ避けるようにしましょう。適度な運動を習慣にすることで、頭痛の予防にもつながります。日々の生活にセルフケアを取り入れることで頭痛の頻度を減らし、生活の質を向上させることが期待できます。
説明した以外にも、頭痛の背後に危険な疾患が潜んでいることがあります。放置していると深刻な結果を招く可能性があるため、早めに医療機関で相談することが大切です。
日本大学医学部附属板橋病院 脳神経内科 石原 正樹先生
このプロジェクトは、大学病院の医療専門家が地域の皆さまに役立つ健康情報を発信し、健康的な生活をサポートすることで、地域全体の健康状態の向上を図ることを目的としています。
(転載・取材に関するお問い合わせ先:med.kouhou@nihon-u.ac.jp)