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板橋発「紫外線照射ロボット」が日大板橋病院で実証実験成功、製品化へ

産学官連携で開発、実証実験を行ったファームロイド製「UVバスター」

産学官連携で開発、実証実験を行ったファームロイド製「UVバスター」

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 バイオエンジニアリング事業を手掛ける「ファームロイド」(板橋区舟渡3)が7月10日、新型コロナウイルス除去を行う紫外線照射ロボット「UV(ユーブイ)バスター」に関する製品説明会を行う。

実証実験を行った日本大学医学部附属板橋病院

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 板橋区とファームロイドは5月28日、日本大学医学部主任教授の権寧博(ごんやすひろ)さんと日本大学医学部附属板橋病院(板橋区大谷口上町、以下、日大板橋病院)協力の下、「UVバスター」を使った病室での実証実験で、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2ウイルス」の不活性化に成功したと発表した。

 ファームロイド社長の飯村一樹さんは「医療施設や板橋区のPCRセンターでの実証実験を今後も継続し、さまざまな用途への応用を検証する。日本大学生産工学部の協力も得て、より高度な能力を持ったロボットの開発を目指す」と話す。

 UVバスターの実証実験を行った日大板橋病院は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、区の協力で仮設陰圧ユニットを装備したPCR検査室を院内に設置し、特定機能病院として多数の新型コロナウイルス陽性患者の受け入れを行ってきた。日本大学医学部は「BSL(バイオセーフティレベル)-3実験室」を保有し、最も厳しい「BSL-4実験室」を持つ国立感染症研究所・理化学研究所筑波研究所・長崎大学感染症共同研究拠点の3拠点に次いで、危険性の高い病原体を実験できる施設となっており、同学部のウイルスや細菌を専門とする教授陣をアドバイザーとした連携プロジェクトでロボット開発を進め、飯村さんも日本大学医学部客員研究員としてウイルスや細菌の研究を行っている。

 飯村さんは日本大学生産工学部建築学科卒で、一級建築士やコンサルタントとして不動産業界で活躍した後、テクノロジーを活用した「スマート農業」のアグリカルチャービジネスを手掛ける「銀座農園」(中央区銀座)を2007(平成19)年に設立。銀座農園の事業経営と並行して2013(平成25)年に「ファームロイド」を設立した。バイオエンジニアリング事業の一環として農作物ウイルスへの紫外線殺菌の研究やロボット工学を活用した技術開発に注力してきたという。2019年5月には銀座農園の「AIラボ」を板橋区内に開設。今年4月に医療機関向け中出力UV殺菌ロボット開発の発表を行った後、5月にファームロイドの本社を板橋区の「ものづくり研究開発連携センター」内に移転した。

 飯村さんは「新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、農業分野で培ってきた紫外線殺菌の研究やロボット開発の技術が活用できるのではと考えた。5月上旬にアメリカ製の紫外線照射ロボットが新型コロナウイルスの不活性化に成功したという報道を見た時は、産学官連携で同じころに実証実験を進めていて励みになった」と話す。飯村さんによると、医療機関における新型コロナウイルス除去製品の実証実験成功は事例が少ない中、国産の紫外線照射ロボットとしては日本初だという。

 日大板橋病院の医療スタッフは「UVバスターを使い、新型コロナウイルスの不活性化を実際の医療現場で実証することができたのは大きい。海外製の同型ロボットの性能に勝るとも劣らず、価格も抑えて、ウイルスフリーな診療現場の提供に貢献して、感染拡大防止や医療崩壊を防ぐ一助になれば」と期待を寄せる。

 「UVバスター」の紫外線照射によるウイルス除去技術は、同社が持つ農作物ウイルス・害虫の除去技術を応用したもので、5月に行われた実証実験で新型コロナウイルス内の核酸(RNA)を破壊し、不活性になったことが確認されたという。UVバスターは、リモコン機器や遠隔地からPCなどで遠隔操作して院内巡回や患者応対などを行い、AIで走路を認識して自立走行もできる。搭載した特殊な深紫外線「UV-C」を照射することで、インフルエンザウイルスをはじめ、さまざまな細菌やウイルスを短時間で99.99パーセント不活性化可能という。

 同社は7月10日以降、板橋事務所で「UVバスター」の製品の詳細説明会を希望の企業個別にオンライン会議ツール「Zoom(ズーム)」などを使って行うという。製品説明の申し込みは同社ウェブサイトの問い合わせフォームなどで受け付ける。

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