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【日大板橋病院からの健康情報】記録的猛暑・「屋内熱中症」に注意

提供:日本大学医学部附属板橋病院 制作:板橋経済新聞編集部

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 日本大学医学部附属板橋病院の医療専門家が地域の皆さまに役立つ健康情報を発信。健康的な生活をサポートすることで、地域全体の健康状態の向上を図ることを目的としています。

 今回は「屋内熱中症」をテーマに、 日本大学医学部附属板橋病院 救命救急センターの山口順子先生に話をしていただきました。

 記録的猛暑が続き、熱中症になる方々が増加しています。

 昨年、令和6年の熱中症による救急搬送人員は、これまで最多だった平成30年の7960人を超え,過去最多となる7993人(速報値)となりました。これは、猛暑だった令和5年と比較して、さらに881人増加しています。(1)

 熱中症による死亡も急増しています。2001(平成13)年から2005(平成17)年までの5年間の平均死亡数は335人(年)でしたが、2016(平成18)年から2020年までの5年間の平均死亡数は1117.8人(年)に増えています。ここ15年間で死亡数が3倍以上となっています。特に近年は,年間1000人超えが続いています。(2)

 全国の職場での熱中症者数も1257人と最多となっています。死者は31人で、過去3年連続で30人以上となっています。こうしたことから、6月1日より職場の熱中症対策が義務化されました。対策を怠った場合は、6カ月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科されることになりました。(3)

「逃げ場」のない熱中症

 熱中症は、野外で活動する方のみならず、実は都内において、救急搬入される熱中症の患者さんは室内発症が約6割と野外での発症を上回っています。その多くは高齢の方々です。(4)理由として体の水分量が少ないことや、暑さやのどの渇きなどを感じにくいことなどがあります。小児も汗を出す汗腺が未発達で体に熱がこもりやすい特徴があることや,大人と比較して身長が低いと、アスファルトなどから受ける放射熱の影響を強く受けやすく熱中症になる危険が高まります。肥満がみられる場合、脂肪によって熱が放散されにくい状態があります。胃腸炎などで脱水状態にある方,心臓や腎臓に持病のある方、麻痺(まひ)など体を動かすことに障害のある方々では、元来の体の水分バランスの調整が難しいことや、利尿を促す薬や脈拍を調整するような治療薬の影響で、暑熱環境で体本来の熱を逃がす働きが難しくなることがありますので、熱中症になりやすいです。精神的な疾患の治療薬などでも暑熱環境での体温調整が難しくなることがあります。元来持病がない方であっても、睡眠不足が続いている方も同じく体温調整が難しくなることで暑さに影響を受けやすくなります。

 このように、発生場所も野外にとどまらず、また小児、高齢者、持病のある方のみならず、元来健康な方でも、体調や環境次第で熱中症になり得ることから、最近の熱中症は、もはや逃げ場のない状況であり、これまでの熱中症のイメージとは異なります。熱中症は命を落とす危険な病態であり、十分に気を付けていただく必要があります。

予防対策について

 室内で死亡するケースでは、エアコンの未使用が多くを占めます。暑さは自覚できないこともあるので、室温計など環境を他覚的に確認できることが望ましいです。衣服は袖や首回りが開き、熱を逃がしやすい服装が望ましく、野外では日傘や帽子をかぶり直射日光を避けることが必要です。

 熱中症の危険性が高くなる状態については、環境省・気象庁から「熱中症警戒アラート」が発表されます。テレビやスマートフォンのアプリなどを活用して、あまりにも危険が高い日では不要不急の野外活動は避けることも検討する必要があります。

 睡眠をしっかり取り、体調を整えておくことが大事ですが、どうしても野外活動をする必要がある際には、活動時間を決め、体がつらくなる前に休憩を取ること、もし不調を感じた場合には作業を中断し、涼しい環境へ移動し安静にすることが必要です。

 脱水があると熱中症にかかりやすくなるため、日頃より、水分をこまめに取っていただく必要があります。水よりも塩分を含んだスポーツドリンクや経口補水液の方が、発汗で奪われた体液を速やかに改善させます。

熱中症を疑ったら

 熱中症は、暑熱障害による症状の総称です。従って、暑熱環境にさらされた状況下での体調不良は、全て熱中症と考えなければなりません。何となく数秒ふらっとするとか、めまい感がある、足がつった感じがするというような軽い熱中症の状態から、意識がなくなり命の危険が生じる重症の状態に急速に進行することがあります。必ずしも、軽症の状態を感じることなく、意識を失うケースもあります。高齢者や小児では症状に気づく、訴えることが難しいことから、周りの方々の見守りが必要です。どのような症状があったら熱中症を疑い対応すべきかについては、私が医師監修を務めたウェザーニュース社のアプリケーション「熱中症チェックシート」(5)をご活用ください。

熱中症の応急処置

 野外であれば日が当たらない涼しい場所へ移動しましょう。飲めるようであれば、水分・塩分をとりましょう。氷と水を入れたビニール袋で血管の多いところ(足の付け根、わきの下、首筋)を冷やすと、効果的に体を冷やすことができます。うちわや扇風機で風を当て,その際、霧吹きなどで水をかけるとより効果的です。体をぬらす水は実は「冷たすぎない」方が望ましいです。 体温が高いときに、人は血管を開いて温度を逃がそうとしますが、冷たい水をかけることにより、体が震えて血管が縮んでしまい、逆に温度を逃がせなくなることもあるためです。応急処置の実際についてユーチューブアーカイブ(6)で動画解説しておりますので、ご参照ください。

 ただし、意識がない、改善しない際には、医療機関で集学的な診療を要する熱中症である可能性や、熱中症ではないその他の原因も考えられます。速やかに救急車を要請してください。

日本大学医学部附属板橋病院 救命救急センター 山口 順子

日大板橋病院とローカルメディアと連携し、地域に健康情報を発信して地域の健康を支える!
「日大地域健康広報プロジェクト」

本プロジェクトは、高齢化社会において地域社会への健康情報の発信を通じて、地域全体の健康水準を向上させることを目的とした社会実装型の取り組みであり、これによりSDGsの達成に寄与することを目指しています。高齢者の増加に伴い、慢性疾患や生活習慣病が広がる中で、医療資源の圧迫と医療費の増大が深刻化している現状において、地域社会での健康増進と予防医療の推進が不可欠です。これにより、SDGsの目標である「全ての人に健康と福祉を」の達成に向けた具体的なアクションを展開することを目指しています。

(転載・取材に関するお問い合わせ先:med.kouhou@nihon-u.ac.jp

※お届けしている健康情報は一般的な知識の提供を目的としており、診断や治療を目的としたものではありません。健康に関する具体的な相談は、必ず医師や専門家にご相談ください。

引用

(1)熱中症の資料 熱中症に注意 東京消防庁
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/heat/toukei.html accessed 2025.06.30 )

(2)厚生労働省「熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho22/index.html accessed 2025.06.30).

(3)職場における熱中症予防対策の周知事業 厚生労働省報道発表資料
https://neccyusho.mhlw.go.jp/ accessed 2025.06.30).

(4)Yamaguchi J, Kinoshita K, Takeyama M. An Easy-to-Use Prehospital Indicator to Determine the Severity of Suspected Heat-Related Illness: An Observational Study in the Tokyo Metropolitan Area. Diagnostics (Basel). 2023 Aug 15;13(16):2683. doi: 10.3390/diagnostics13162683. PMID: 37627942; PMCID: PMC10452966.

(5)「熱中症チェックシート」
https://weathernews.jp/heatstroke/check_sheet.html?fm=news

(6)Youtube アーカイブ
ウェザーニュース 熱中症予防ウィーク 現役医師が教える熱中症対策
https://www.youtube.com/watch?v=8icxQ6nogts

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