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教育科学館で「震災の記録と記憶展」 パノラマ鏡初展示、映像生解説も

浅草十二階を模した「パノラマ自働眞體鏡」は初展示

浅草十二階を模した「パノラマ自働眞體鏡」は初展示

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 板橋区立教育科学館(板橋区常盤台4)で9月1日、企画展「震災の記録と記憶展」が始まった。

山端さんが発見して話題になった1923年当時の記録映像の解説付き上映会も見どころ

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 ネットやテレビ、ラジオがない時代に新聞・書籍などの印刷物以外で関東大震災などの大規模災害の記録と記憶がどのように伝承されてきたのか、同館研究員の山端健志さんが個人所蔵するコレクションを中心に、メディア史や光学技術などの観点で展示紹介・解説する同展。2023年9月に初開催し、今年3月に続いて今回で3回目となる。

 今回の展示では、関東大震災で倒壊した浅草のシンボルだった凌雲閣(りょううんかく=浅草十二階)を模した、内部に設置した被災地写真などの絵はがきから生成したと見られる立体視用の「ステレオ写真」がぜんまい仕掛けで動く1910(明治43)年製の「パノラマ鏡」を初披露。見せ物として当時流行した現物のからくり装置で、双眼のスコープをのぞいて立体視が体験できるほか、反射光学を応用して内部に設置した絵はがきを投影する1929(昭和4)年製の「絵はがき幻燈(げんとう)」、1920年代に製造されて流通した活動写真機や映写機、大震災の被災地写真を使った絵はがきや出版物などを展示する。

 5日・7日・8日の14時30分~15時は、「日本に映画技術が伝わって以降、津波被害を捉えた最も古い映像記録が見つかった」と大きく報道されて話題となり、昨年の展示で初めて一般公開された日本最古の津波被害記録フィルム「関東大地震 大正十二年九月一日 大阪朝日新聞社撮影」の有料上映会を行う。発見者の山端さん自らフィルムの複製版を、当時使用されていた手回し映写機で投影しながら解説する。

 同フィルムは、山端さんが2022年秋に翌年に控えた関東大震災100年の展示を企画する中で購入した骨董(こっとう)品の35ミリフィルムで、IMAGICAエンタテインメントメディアサービス(東京都港区)で修復・復元。写真資料や当時の大阪朝日新聞の記事は確認できたが、朝日新聞社に同じ映像フィルムの保管はなく、内容の重複が見られる国立映画アーカイブ所蔵で朝日新聞撮影と考えられてきた16ミリフィルムにはない、関東大震災後に伊豆半島で発生した津波被害の様子がうかがえる5分42秒の映像が山端さん所蔵のフィルムには収められている。

 山端さんは「凌雲閣を模した『パノラマ鏡』は、メーカーや名称は異なるが国内では個人蔵を含めて5点ほどしか現存するものが確認されていない。今回の初展示品は、関東大震災の被災地写真の絵はがきから作成したと見られるステレオ写真が付いていた点も興味深く、ぜんまい仕掛けで内部のステレオ写真が切り替わる機構が現役で動く唯一のものだと思う。当時ニュースメディアの役割を担った一つに絵はがきがあり、記録映像の再上映なども含めて当時の人々が大規模災害の記録に触れたさまざまなメディアを追体験してもらえたら」と呼びかける。

 山端さんによる解説付き記録映像の上映会の参加費は500円(2歳未満無料、定員は先着25人)。1階受付でチケットを販売する。

 地下1階の飲食コーナーでは、災害発生時の区内避難所や帰宅困難者の一時滞在施設・災害時帰宅支援ステーション、区内での火災発生時に延焼火災の恐れが少ない不燃化対策が進んだ「地区内残留地区」の案内、科学知識に裏付けされた「いろいろな水の活用」「家にある燃料」の利活用などについて解説するパネル展示を行う。

 開館時間は9時~16時30分。観覧無料。今月8日まで。

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