板橋区大山町の居酒屋「呑食処(のみくいどころ) 味ん輝(みんき)」(TEL 080-3028-8608)が、店主によるツイートをきっかけに口コミが広がって客足を増やしている。
「やっぱり誰も来ず閉店」「久しぶりのお客さんと思ったら逃げてった」 アカウント開設から4年、苦難のツイートが続いていた
同店は2011年5月、東武東上線・大山駅南口と直結するハッピーロード大山商店街の中ほどにオープン。店主の小林さんはこれまで、居酒屋や飲食店、ホテルで厨房(ちゅうぼう)やサービススタッフを務め、「いつか自分の店を持つまでの修行として、和食・洋食の料理や接客サービスを勉強してきた」という。
開業後、思うように客足は伸びず、知人の勧めもあって2012年9月にツイッターアカウントを開設。「どちらかというとアナログな人間で、どんなことをツイートすればよいかもわからず、かといって宣伝広告にお金をかけられる状況になかった」と語る小林さん。反響は乏しく、「出稼ぎ」と称して他の飲食店の仕事を手伝いに行くようになったという。次第にツイートする内容は弱音や愚痴が多くなったが、「店をつぶすにもお金がかかる。数少ないお客さんからの『料理がおいしい』というお褒めの言葉を糧にしてきた」と小林さん。日中の出稼ぎで生活費と店の家賃をやりくりしながら、夜数時間だけ店を開くスタイルで5年間営業を続けてきた。
そんな中で変化を感じたのは今年7月ごろ。「私の自虐的なツイートに哀れみを感じてくれた方や、面白半分に来られたような方が店の料理や感想をツイートしてくれて、私もリツイートや返信をしているうちにフォロワー数が急増していた」という。9月にネットの記事で紹介されると、さらに注目されるようになった。
「フォロワー数がどんどん増えて、来店予約の電話が一日に何本もくるようになった。決めた出稼ぎを急に断ることもできず、飛び込みのお客さんをお断りすることもあって本当に申し訳なく思っている」と小林さん。一方で、「今は一時的なバブルが来たと思うようにしている。料理がおいしいと言ってもらえるのはうれしいが、ネットで話題になっていなかったら同じことを言ってもらえたかどうかは疑問。一緒に写真を撮ってほしいというお客さんも多くて、どちらかといえば観光地化している印象。またいつ客足が途絶えるか分からないので、出稼ぎ仕事も続けながら、来てくれるお客さんに心を込めて丁寧に接していきたい」と冷静だ。
小林さんと長い付き合いだという40代の男性客は「大山の他のお店に顔を出した時に、味ん輝に連れていってほしいと顔なじみの女性客に声を掛けられて戸惑った」と話す。「ネットで話題になっていると聞いて、自分だけの秘密基地と思っていたお店が多くの人に知られてしまった悔しさと、マスター良かったねといううれしさが半々」とも。小林さんは「別の知人が来店した際、店内に客が複数いることや予約の電話が来ていることに驚いていた。以前だったら『2日続けてリピート客が来る奇跡が起きた』とツイートをしていたはず」と笑う。
営業時間は21時~翌0時30分(金曜、土曜は17時30分~)。来店予約は電話で受け付ける。