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志村で文化財講座「修復の秘密」 考古学・美術史学・歴史学の視点から解説

考古学分野では、講演の合間に実物の土器の破片を組み合わせる体験会を実施

考古学分野では、講演の合間に実物の土器の破片を組み合わせる体験会を実施

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 板橋区教育委員会と板橋区立美術館所属の専門学芸員4人による文化財講座「修復の秘密」が6月23日、板橋区立グリーンカレッジホール(板橋区志村3)で開かれた。

美術館収蔵品の修理過程、ビフォア・アフターなどを解説する印田由貴子さん

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 講座は同区教育委員会の生涯学習課文化財係が企画・主催し、2023年6月に初開催した「学芸員が語る!板橋区の文化財最前線」シリーズの第2弾。今回の講座では、総論・考古学・美術史学・歴史学の4分野の観点から板橋区指定・登録文化財の修復(修理)事例の紹介と、「修復から何を知ることができるのか」という共通テーマで講演を行った。

 文化財係長の吉田政博さんによる総論では、旧粕谷家住宅の復元プロジェクトに触れたほか、台風による多摩川の氾濫で地下の収蔵庫が浸水したことで大半の資料を廃棄せざるを得なかった川崎市民ミュージアムの事例を引き合いに災害対策の現状や文化財レスキューの取り組みを紹介。同学芸員の小山侑里子さんによる考古学分野の講演では、板橋区内の遺跡から発掘した土器に見られる修復の跡や、別用途で再利用したと見られる痕跡、「焼き継ぎ」の技術を紹介したほか、東京都指定文化財の「前野町式土器」の修復プロジェクトの詳細を解説した。

 板橋区立美術館の学芸員・印田由貴子さんによる講演では、江戸時代の絵画の修理事例について、掛け軸の表装や表具などの構造を説明した上で、「美術史の観点では、所有者の好みに合わせた表装や修理した変遷などを明らかにすることが不可欠。修理する過程で新たな発見があることも多い」と解説。文化財係の学芸員・杉山宗悦さんによる歴史学分野では、国の史跡指定を受けた旧陸軍板橋火薬製造所跡地の建造物を戦後に再利用した「理化学研究所板橋分所」の来歴と、同施設内で度々増改築された「物理試験室」について解説した。

 講座の最後に4人の学芸員へ質疑応答が行われ、来場者からは、地域によって異なる考古学上の見解の相違、GHQが接収した軍用地などの施設利用の実態、美術品修理における技術承継と装具の希少な材料確保の問題など多くの質問が飛び交った。

 直近で予定している修復の予定について、吉田さんは「各方面へ相談・調整を進めていて、補助金などで修理・保存を行っていく必要がある」として、10月下旬~11月上旬開催予定の「文化財ふれあいウイーク」で公開予定の仏画の修理や、カモが旧粕谷家住宅のかやぶき屋根から巣作り用にかやを多数持ち去ったことが判明して「差しかや」作業を申請しているという。

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