板橋区立郷土資料館(板橋区赤塚5、TEL03-5998-0081)で2月10日、文部科学省教科書調査官の川辺文久さんによる講演会「化石が語る太古の板橋」が行われた。
同館で現在開かれている特別展「水のゆくえ~荒川の歴史~」関連事業の一環。同展では、区内遺跡からの出土品や水害に関する古文書のほか、寺社が低地から移転したことを示す古記録から水のゆくえを追い、人が住む前の時代から板橋地域の成り立ちを荒川の歴史と共に紹介する。
同講演では、地球科学分野の専門家でもある川辺さんが同講演で貝化石が出土した板橋区内の場所や内容を紹介・解説した。
川辺さんは「貝化石は地層の年代を決める上で重要な役割を果たし、堆積する環境に適した化石が観察されることから、地層の年代や当時の環境を特定する際に重要な資料」と話す。「2016年に東京地質学会が『東京都の化石』に認定した絶滅種のトウキョウホタテをはじめとする同館所蔵の貝化石は、出土地の明らかな資料群が確認されていることが特徴」とも。古環境の復元や東京層の年代を解明するための研究素材として注目されているという。
同日、同館学芸員による展示解説も行われた。同学芸員によると、板橋区は都内でも遺跡の多い地域で、遺跡の多さは多くの人が生活していた証しであり、昔から住みやすい地域だったことがうかがえるという。「板橋区の起伏の多い地形は、荒川の浸食・堆積作用に始まり、縄文海進(じょうもんかいしん)、荒川の瀬替(せが)え、荒川放水路の開削などにより、長い歳月をかけて形成された」とも。
同学芸員は「区の歴史をひも解くと、水の行方により生活を大きく転換する一方、新たな関わりを産み出す元になっていた。展示を見学することで、水が持つ災害と恵みについて考えるきっかけになれば」と話す。
次回の展示解説は3月17日(13時30分~)を予定する。
開館時間は9時30分~17時。入場無料。月曜休館。3月25日まで。