提供:日本大学医学部附属板橋病院 制作:板橋経済新聞編集部
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今回は「肝臓」をテーマに、日本大学医学部附属板橋病院 消化器・肝臓内科 増崎 亮太 先生に話をしていただきました。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。心臓のように痛みを感じたり、肺のように息苦しさを訴えたりすることが少なく、かなり進行するまで症状が現れにくい臓器です。だるさや食欲不振などの軽い不調は、仕事の疲れや年齢のせいと考えてしまいがちです。しかし、気づかないうちに肝臓の中では炎症や線維化が進み、気づいた時には肝硬変や肝がんを発症していることもあります。

肝臓は体の中で最も働き者の臓器です。食べ物から得た栄養をエネルギーに変え、余分な糖や脂肪を蓄え、薬やアルコールなどの有害物質を分解します。血液を固めるためのたんぱく質を作るなど、生命維持に欠かせない役割も担っています。
このように多くの機能を持つため、多少の障害があっても他の部分で補うことができます。そのため異常があっても自覚症状が出にくく、「沈黙の臓器」と呼ばれるのです。

以前は肝臓の病気といえばB型・C型肝炎やアルコール性肝障害が中心でした。しかし近年では、脂肪肝(MASLD:代謝異常関連脂肪性肝疾患)が急増しています。
脂肪肝は肝臓に脂肪がたまった状態で、放置すると「脂肪肝炎(MASH)」に進み、肝硬変や肝がんに至ることもあります。しかも、お酒をあまり飲まない人でも、肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常などの生活習慣が関係して発症します。日本人成人の約3人に1人が脂肪肝を持っているともいわれ、決して特別な病気ではありません。

肝臓の異常を早期に発見するには、年1回の健康診断が重要です。AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの肝機能検査値を確認し、前年と比べて上昇していないかを見てください。「少し高いけれど、体調はいいから大丈夫」と放置するのが一番危険です。原因をきちんと調べることで、生活習慣の改善や薬の調整、さらには肝がんの早期発見につながることもあります。
この考え方は、日本肝臓学会が2023年に発表した「奈良宣言2023」にも示されています。奈良宣言は、ウイルス性肝炎が減少する一方で、脂肪肝など生活習慣に起因する肝疾患が増えている現状を踏まえ、ALT(GPT)が30を超えた場合には専門医との連携を含めて原因を調べることの重要性を強調しています。
健診ではしばしば「40まで正常」とされますが、実際には30を超えると慢性的な肝障害の可能性があることが分かっています。健診での軽度異常を見逃さず、早めに医療機関で相談することが肝臓を守る第一歩です。

B型・C型肝炎ウイルスの有無を調べる「肝炎ウイルス検診」も非常に重要です。これらの感染症は初期症状が乏しい一方で、長い年月をかけて慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行することがあります。採血だけで簡単に分かる検査ですので、一度も受けたことがない方はぜひ活用してください。

対象は35歳以上(平成3年3月31日以前生まれ)の区民で、平成14年度以降に板橋区または他の市区町村で同様の検診を受診していない方です。既にウイルス性肝炎に罹患(りかん)されている方や治療中の方は受診できません。詳細は板橋区の公式案内でご確認ください。
これらはいずれも、肝臓の線維化や脂肪の状態を評価するうえで有用です。必要に応じて医療機関でご相談ください。
肝臓を守る基本は「バランスの取れた生活」です。特別なサプリメントや民間療法よりも、次の3つが何より大切です。
肝臓は、沈黙していても確実に日々の生活習慣を記録しています。暴飲暴食、睡眠不足、運動不足といった積み重ねは、数年後に「数値の異常」として現れます。
逆にいえば、今日からの生活改善が将来の自分を守る最大の“薬”です。「何となくだるい」「健診のALTが30を超えた」-その時が、肝臓からの静かなSOS。健康診断や肝炎検診を上手に活用し、肝臓をいたわる暮らしを心がけましょう。
日本大学医学部附属板橋病院 消化器・肝臓内科 増崎 亮太

本プロジェクトは、高齢化社会において地域社会への健康情報の発信を通じて、地域全体の健康水準を向上させることを目的とした社会実装型の取り組みであり、これによりSDGsの達成に寄与することを目指しています。高齢者の増加に伴い、慢性疾患や生活習慣病が広がる中で、医療資源の圧迫と医療費の増大が深刻化している現状において、地域社会での健康増進と予防医療の推進が不可欠です。これにより、SDGsの目標である「全ての人に健康と福祉を」の達成に向けた具体的なアクションを展開することを目指しています。
(転載・取材に関するお問い合わせ先:med.kouhou@nihon-u.ac.jp)
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