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【日大板橋病院からの健康情報】「心の不調」を見逃さない -うつ病と向き合うために-

提供:日本大学医学部附属板橋病院 制作:板橋経済新聞編集部

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 日本大学医学部附属板橋病院の医療専門家が地域の皆さまに役立つ健康情報を発信。健康的な生活をサポートすることで、地域全体の健康状態の向上を図ることを目的としています。

 今回は「うつ病」をテーマに、日本大学医学部附属板橋病院 精神神経科 横瀬宏美先生に話をしていただきました。

うつ病の定義と疫学について

 うつ病とはどんな病気なのでしょうか。誰しも大切なものを失ったり、つらいことがあったりしたとき、ひどく落ち込むことがあるでしょう。しかしうつ病では、一日中憂鬱(ゆううつ)な、悲しい気分が続き、好きだったことにも心が動かず、うれしいという感情が失われてしまうのです。さらに、疲れているのに眠れないといった不眠の症状や、食欲が湧かない、体がだるいなどの身体症状を伴います。これらの症状が2週間以上続き日常生活に支障をきたすものを「うつ病」と定義しています(1)。日本人を対象とした研究では、うつ病の生涯有病率は約6.5%とされており、一般人口の15人に1人はうつ病を経験するということになります(2)。また男性に比べると女性では2倍ほどうつ病が多いことが知られています。うつ病はしばしば「気の持ちよう」「怠け」と誤解されてしまいますが、脳の機能や生物学的要因が関与した一つの病気なのです。

うつ病の原因は明らかになっていない

 ではうつ病の原因は何でしょうか。実は明らかな原因はまだ分かっていません。

 ご想像の通り人生における大きな出来事がきっかけでうつ病になることはあります。配偶者との別れ、家族や自分の病気、職場の過重労働での疲労などのストレスフルな出来事です。しかし昇進や進学、結婚といった喜ばしいライフイベントでもうつ病が発症することも知られており、さらには特に契機となる出来事がない場合もあるのです。

 恐らく、うつ病は一つの原因で発症するのではなく、脳内でのセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどの神経伝達物質の変化、神経可塑(かそ)性の低下、炎症反応などの生物学的な不調と、心理・社会的ストレスなどが相まって発症するのではないかと考えられています。前頭前野や海馬の機能や容積の変化も報告されています。

うつ病の症状

 うつ病の精神症状にはさまざまな症状があります。気分が落ち込み、憂鬱な気分になったり、これまで好きだったことへの興味や喜びがなくなったりします。また、気力が低下して何をするにもおっくうになる、集中力がなくなり能率が低下する、物事の判断ができなくなるといった症状も見られます。過去の失敗を思い悩んだり、どこか体に異常があるのではないかという強い不安感や落ち着きなく動き回ったりするといった焦燥感が見られることもあります。うつ病の精神医学的な診断には、同じ2週間の間に5つ以上の症状があるかを確認します。抑うつ気分、興味や喜びの消失は主要症状で、そのほか睡眠(過眠・不眠)、食欲(増減)、疲労感、集中困難、自責感や希死念慮(ねんりょ)などの症状も評価します。また他の身体疾患や薬剤によるうつ状態を除外することも必要です。

うつ病の治療とエビデンス

 軽いうつ病では、「精神的な休息をとること」「回復には数カ月かかること」「症状は一進一退しながら一つずつ取れていくこと」など療養の方針について説明を受け、生活習慣を見直し、家庭や職場などの環境を調整しながら自然回復を待つという方法もあります(3)。

 精神療法としては、一般的に支持的精神療法が行われています。さらに専門的な精神療法としては認知行動療法(CBT:cognitive behavioral therapy)があります。抑うつの思考パターンとして「何をしてもうまくいかない」「周りに迷惑をかけてしまった」などの悲観的な認知があり、これらにアプローチしていくのがCBTです。軽~中等度のうつ病に対して有効であるとされています。

 薬の治療では、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの変調を整える抗うつ薬が使われます。抗うつ薬には即効性はなく、効果を判定するには数週間かかります。効果がすぐに実感できなくても、毎日内服していると「あれ?少し楽になったかも」という日が来ます。抗うつ薬が効かないときには、薬を増やしたり変更したり、効果を強める薬を併用したり、といった工夫をします。大規模な臨床治療試験でも段階的なうつ病治療戦略の有効性が示されています(4)。また抗うつ薬が効かないときは双極性障害を疑うこともあります。双極性障害は躁(そう)状態と抑うつを繰り返す病気で、治療への抵抗性、抗うつ薬による躁転、などの特徴があるとされています。

 生物学的な治療としては、高照度光療法、電気けいれん療法(ECT : electro convulsive therapy)、反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)などの有効性が示されています(5)。

 うつ病は症状が軽快した後も再発予防のために少なくとも6カ月から1年薬を継続することが推奨されています。一度寛解しても再発することがあり、継続した治療、ストレス対処、睡眠の確保、運動などが予防につながります。

終わりに

 うつ病は気分障害という病気で、怠けているのではありません。早期の回復につながるようぜひ早めに専門家にご相談ください。

参考文献

  1. DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル第5版
  2. 川上憲人:世界のうつ病、日本のうつ病-疫学研究の現在.医学のあゆみ. 219(13), 925-929, 2006.
  3. 笠原 嘉ほか編:感情障害-基礎と臨床-, 朝倉書店
  4. Acute and longer-term outcomes in depressed outpatients requiring one or several treatment steps: a STAR*D report. Am J Psychiatry. 2006 Nov;163(11):1905-17.
  5. 日本うつ病学会治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016(2024.3.1改訂、一部修正)

日本大学医学部附属板橋病院 精神神経科 横瀬宏美

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「日大地域健康広報プロジェクト」

本プロジェクトは、高齢化社会において地域社会への健康情報の発信を通じて、地域全体の健康水準を向上させることを目的とした社会実装型の取り組みであり、これによりSDGsの達成に寄与することを目指しています。高齢者の増加に伴い、慢性疾患や生活習慣病が広がる中で、医療資源の圧迫と医療費の増大が深刻化している現状において、地域社会での健康増進と予防医療の推進が不可欠です。これにより、SDGsの目標である「全ての人に健康と福祉を」の達成に向けた具体的なアクションを展開することを目指しています。

(転載・取材に関するお問い合わせ先:med.kouhou@nihon-u.ac.jp

※お届けしている健康情報は一般的な知識の提供を目的としており、診断や治療を目的としたものではありません。健康に関する具体的な相談は、必ず医師や専門家にご相談ください。

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