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【日大板橋病院からの健康情報】ストレスの気づき方、上手な付き合い方

提供:日本大学医学部附属板橋病院 制作:板橋経済新聞編集部

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 日本大学医学部附属板橋病院の医療専門家が地域の皆さまに役立つ健康情報を発信。健康的な生活をサポートすることで、地域全体の健康状態の向上を図ることを目的としています。

 今回は「ストレス」をテーマに、 日本大学医学部附属板橋病院 心療内科・緩和ケアチーム 公認心理師・臨床心理士の石風呂素子先生に話をしていただきました。

はじめに

 2024年に厚生労働省が公表した厚生労働白書では、「こころの健康」を、「人生のストレスに対処しながら、自らの能力を発揮し、よく学び、よく働き、コミュニティーにも貢献できるような、精神的に満たされた状態」と定義しています。

引用:令和6年版 厚生労働白書

 ストレスとは、外部から刺激(ストレッサー)を受けた状態に適応しようとして、心や身体が反応して生じる緊張状態のことを言います。私たちは生活全般にわたり常に何らかのストレスを受けています。

 過剰なストレス状態が長く続くと、心身のバランスが崩れ、病的状態になったり、人との関わりを避けるようになったり、仕事の能率や生産性が低下することがあります。そのため、ストレスによる心身の不調を未然に予防することは喫緊の課題と考えられます。その一方で、ストレス学説を提唱したカナダの生理学者ハンス・セリエ(1907-1982)は、「ストレスは人生のスパイスであり、適度なストレスは人生を楽しくさせる調味料のようなもので、生きる意欲や活力、創造性を促す」とも言っています。

 そこで、ここでは、ストレス状態に気づくこと、ストレスと上手に付き合う方法について、普段の生活の中でできることについて考えたいと思います。

ハンス・セリエ博士のポートレート写真(Portrait photographique d’Hans Selye, professeur émérite à l’Université de Montréal. 撮影者:Jean-Paul Rioux, 出典:Wikimedia Commons)

ストレスの状態に気づく

 ストレスは生活上の大きな出来事、例えば災害、転居、転職、入学、進学、就職、結婚、妊娠・出産、離別・死別などの環境の変化だけでなく、日常生活の中で感じるささいないらだち事(デイリーハッスル)でも生じます。日常生活におけるいらだち事としては、例えば毎日満員電車に乗る、不規則な生活が続く、対人関係がうまくいかない、忙しすぎて余裕がない、収入が増えないなどがあります。一つ一つはささいで我慢できることかもしれませんが、日々長期間繰り返されることでストレス状態が慢性化し、次第に心身の不調をもたらすことが知られています。

 人間には恒常性(ホメオスタシス)といわれる心と身体のバランスを保とうとする機能が備わっており、ほどほどのストレスであれば心身のバランスがとれた適応状態を維持することができます。しかし、ストレス状態が慢性化するとさまざまな支障が出てくることが分かっています。

 例えば、身体面では頭重感や肩こりなどの緊張状態、食欲低下や下痢など胃腸の不調、慢性的な疲労感、持病の悪化、心理面では良眠できない、イライラする、意欲・気力の低下、不安や抑うつ感の増強、行動面では暴飲・暴食、集中力や判断力低下によるミスの増加、粗暴などがあり、これらは自分がストレス状態に置かれていることに気づくサインになると考えられます。

ストレスと上手に付き合う

 ストレス状態にあることに気がついてマネジメントすることは、心と身体がストレスにさらされた状態を持続・悪化させないだけでなく、ストレス状態に陥ることを未然に防ぐことも期待できます。ここでは、ストレスから心と身体を守るためのさまざまな対処法について考えたいと思います。

 同じ出来事に遭遇しても、ストレスを感じる人もいれば、ストレスをあまり感じなくて済む人もいます。ストレッサーの質、量、持続時間だけでなく、その出来事をどのように認識するか(認知)、どのように体験するか(感情)、どのように振る舞うか(行動)、どのように身体が反応するか(身体)によって、ストレスの受け止め方が変わると考えられます。

 認知に働きかける方法としては、いつもの自分の考え方とは別の視点で物事を捉えてみる、「~すべき」「~しなくては」という考え方を「自分はどうしたいか」という考え方に変えてみることなどが挙げられます。

 感情に働きかける方法としては、楽しい、幸せ、安心などを感じられるように自分にとって心地良いことを生活の中に取り入れることが役に立つと考えられます。

 行動に働きかける方法としては、いつもの自分の対処の仕方を変えて、例えば、頑張るばかりではなく思い切って休息を取る、自分のやりたいことを優先してみるなど、いつもと違う行動をしてみることが有用かもしれません。

 身体に働きかける方法としては、しっかり休息をとる、規則正しい生活を心がける、リラックスできる時間を生活に取り入れることなどが考えられます。

 認知、感情、行動、身体は相互に関連しているため、自分が変化させられそうなところにまず働きかけることで、他の部分も変化して、ストレスの受け止め方や対処の仕方が全体的に変わることが期待できます。

 しかし、感情を認識したり、表現したりすることが難しい傾向がある人「アレキシサイミア(失感情症)」、あるいは身体の感覚に気づきにくい傾向がある人「アレキシソミア(失体感症)」は、自分でも気づかないままにストレス状態が持続して、心身ともにバランスを崩すことがあります。自分で対処しきれない場合は、身体症状と心のつながり(心身相関)を扱う心療内科、精神症状を扱うメンタルクリニックなどの専門機関で相談することが必要になるかもしれません。

 ストレスに対する対処法のレパートリーを多く持っているほど、さまざまな場面に柔軟に適応を図ることができると考えられます、厚生労働省が発信している「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」にセルフチェックリスト、具体的なストレス対処法が示されていますので、参考にすると良いと思います。

引用:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳

まとめ

 適度なストレスの段階で心身の変化に気づき、ストレスを上手にマネジメントして、上手に付き合っていくことは、身体的・心理的・社会的に良い状態(ウェルビーイング)をもたらし、人生を豊かにすることが期待できるでしょう。

日本大学医学部附属板橋病院 心療内科・緩和ケアチーム 公認心理師・臨床心理士 石風呂素子先生

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本プロジェクトは、高齢化社会において地域社会への健康情報の発信を通じて、地域全体の健康水準を向上させることを目的とした社会実装型の取り組みであり、これによりSDGsの達成に寄与することを目指しています。高齢者の増加に伴い、慢性疾患や生活習慣病が広がる中で、医療資源の圧迫と医療費の増大が深刻化している現状において、地域社会での健康増進と予防医療の推進が不可欠です。これにより、SDGsの目標である「全ての人に健康と福祉を」の達成に向けた具体的なアクションを展開することを目指しています。

(転載・取材に関するお問い合わせ先:med.kouhou@nihon-u.ac.jp

※お届けしている健康情報は一般的な知識の提供を目的としており、診断や治療を目的としたものではありません。健康に関する具体的な相談は、必ず医師や専門家にご相談ください。

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