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板橋のコミュニティー空間「あゆちゃんち」の挑戦 地域共生に向け4度目の夏

坂川亜由未さん(写真奥左)と智恵さん(写真奥右)

坂川亜由未さん(写真奥左)と智恵さん(写真奥右)

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 重症心身障がい者である坂川亜由未さんと母・智恵さんが共同で運営する地域コミュニティースペース「あゆちゃんち」(板橋区徳丸1)が4度目の夏を迎えた。

赤ちゃんも、お年寄りも、障がい児者も一緒に参加できる居場所づくりを目指している

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 亜由未さんは先天性の心臓病で生後4日目に手術を受け、その後に脳の血管が破れたことから脳性まひによって重度の障がいが残った。肢体不自由で首と右手以外はほとんど独力で動かすことができず、知的障がいも抱え、医療による支援を必要とする重症心身障がい者(=医ケア重心)の認定を受けている。

 智恵さんによれば、生活介護のデイケア施設は、医ケアを必要としない重症心身障がい者(重心)は、例えば平日5日通うことができて定員数も多い一方、医療設備や専門の介助要員が必要となる医ケア重心は受け入れ可能な施設が少ない上、通える日数も週3~4日で定員数も極端に少ないという。「人目を避けて自宅や施設にこもって日々静かに暮らすのではなく、障がい者も地域交流しながら自立していける道を模索するべきでは、と考えるようになった」と智恵さん。

 亜由未さんが学校を卒業した2012年、母娘で「就職活動しよう」と決意し、ボランティアで働ける場所を求めて公共の教育・福祉施設や老人ホームなどを訪ねるも、「前例がなく、危険も伴う」と全て断られた。縁あって声を掛けてもらったコミュニティースペースを手伝う機会を得るも、医療設備や器具が幅を取るため活動エリアが限られる上、トイレにも不便し、慣れないうちは急に体調を崩すなどしたことが重なって、すぐに断念せざるをえなくなったという。

 他地域の先行事例をリサーチし試行錯誤を重ねた結果、自宅の一部を地域交流の場として開放することを決め、「誰もが出番のある、バリアフリーの地域コミュニティースペースを自分たちでつくろう」と2014年6月、母娘2人で「あゆちゃんち」をスタートした。

 近隣大学の学園祭や地域イベントに参加しながら徐々に活動の幅を広げ、当初は週1回イベントを主催する程度だったのが、現在は学生サークルや地域団体が英会話や手話教室、太極拳、ゴスペル、ハンディキャップヨガ、絵本の読み聞かせなど、レギュラーイベントを含めて毎週3~4回の催しが開かれるまでになった。

 昨年7月26日に発生した相模原殺傷事件に端を発し、亜由未さんの兄でNHK青森放送局のディレクターを務める裕野(ゆうや)さんが、亜由未さんと亜由未さんを介助する家族にカメラを向けたドキュメンタリー番組「亜由未が教えてくれたこと」が今年5月にNHK教育テレビで放送されたことで、さらに注目を集めている。

 今後の展望について智恵さんは、「赤ちゃんも、お年寄りも、障がい児者も一緒のデイサービス+コミュニティースペースとして、地域に開かれた、多様な関わりと多様な経験が持てる場を目指したい」と話す。「あゆちゃんち」の活動を持続可能なものとするために、将来的には法人化することも検討しているという。

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