ときわ台の天祖(てんそ)神社(板橋区南常盤台2)が、社号改称記念誌「天祖神社150年ー『国づくり』から『まちづくりへ』ー」を発行し、4月21日、同神社で行った祖霊祭・祈年祭でお披露目した。
天祖神社を訪れた文人・大田南畝(なんぽ)が描かれたバッグに入れて配布
同神社は江戸時代まで「神明宮(しんめいぐう)」という名前だったが、1873(明治6)年に改称。現在の「天祖神社」の社号になってから昨年で150年を迎えた。昨年4月には、同神社が提供するパブリックスペース「杜のまちや」にて企画展「天祖神社の150年ー神明宮から天祖神社へー」を開催。企画展では、神社と地域の歴史などが分かる写真や文書などを展示した。
小林美香宮司は「昨年の展示会はたくさんの方に来ていただき、地域の歴史に関心のある方も多いと感じた。今回の記念誌は、その展覧会の図録をイメージしている。まず、なぜ『天祖神社』という名前なのかを資料から読み解いていった」と話す。
記念誌には社号改称の経緯はもちろん、江戸時代から現在までの神社の歴史などを掲載。地域の歴史を紹介する第1章と、板橋区登録文化財に指定されている「天祖神社文書」について記した第2章は、先代宮司の小林保男さんがまとめたものを転載・再掲している。郷土史にも詳しかったという先代は、文化財の調査・研究をする板橋史談会が発行する冊子に連載していたが、連載途中の2021年に他界。「先代はもっと書き続けたかったと思う。その遺志を継いだ冊子でもある」と小林宮司は話す。
歴代の神職や地域の人々の歴史に言及しているのも特徴。「神社を支えてきた人たちがどんな人だったかというのは、あまり公にされてこなかったので、かなり踏み込んだ内容になっている。例えば、宮司の奥さんは表に出てこない存在だが、いろいろな役割がある人物。そうした光が当たらない部分にも光を当てた」とも。
編集に携わった榎本圭佑さんは「誰が何をしてきたかを知ることで、自分は積み重ねられた歴史の上に立っている、その積み重ねに加わっている一人でもある、と感じた」と振り返る。
「地域の歴史を伝えていく、本にして残すというのは神社の務めの一つだと改めて意識した。歴史を踏まえて、これからどういったまちづくりをしていくのか考えることも重要。本を制作する過程でまだまだ知らないことがあると分かったので、これで終わりではなく、これがスタートと感じている」と小林さんは話す。
仕様はA4版150ページ。発行部数は1500部。希望者に配布している。